
2020年の夏、東京オリンピックが開催されます。東京オリンピック開催時には多くの外国人観光客が日本に訪れることが予測されます。
そこで問題になるのが訪日外国人の受け入れ施設です。現状「足りている」という状態ではないといえます。そこで訪日外国人の受け入れ施設として「民泊」がクローズアップされています。
今回は東京オリンピックと民泊について考察していきたいと思います。
1 4,000万人の訪日外国人数が予測されている
政府は2020年の東京オリンピックの際の訪日外国人数を4,000万人と予測しています。現状訪日外国人観光客は年間2,000万人ほどですので、およそ倍もの訪日外国人が日本に滞在することになります。
4,000万人もの外国人観光客の宿泊先を確保することは物理的にも難しいといわざるを得ません。ですから、政府は東京オリンピックに向けて「民泊」に関する規制を緩和し、素人でも民泊を営業することができるように法改正を行いました*。
*参考:「住宅宿泊事業法(民泊新法)」
2 民泊新法(住宅宿泊事業法)の改正点
民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行されることで、民泊に関して実際にどのような影響があるのでしょうか?
① 新たに「家主在住型」と「家主不在型」の民泊形態が規定
民泊新法では新たに「家主在住型」と「家主不在型」の民泊形態が規定されました。
ⅰ 家主在住型
民泊として提供する施設に家主(ホスト)が住んでいる民泊形態。ホストは住民票が民泊として提供する施設にあり、そしてそこに実際に住んでいる必要があります。
ⅱ 家主不在型
民泊として提供する施設に家主が実際に住んでいない民泊形態。この場合、民泊として提供する施設に民泊を維持管理する人を置かなければいけません。
② 180日ルールの規定
民泊として住宅施設を提供できるのは1年間で180日以内と規定されました。このため、民泊をビジネスとして活用することは難しくなったといえます。
③ 住宅宿泊事業者の罰則規定の強化
・無届け営業、虚偽の届け出、180日を超過しての営業をした場合
6か月以下の懲役または100万以下の罰金
・住宅宿泊管理業者に委託しなかった場合
50万円以下の罰金
・宿泊者名簿を備え付けなかった場合、届出内容に変更が生じた際に届出を行わなかった場合
30万円以下の罰金
・宿泊者名簿に虚偽記載をした場合
拘留または科料
上記のように罰則が強化されたため、いわゆる「やみ民泊」を運営している業者は廃業せざるを得なくなります。
④ 「家主在住型」と「家主不在型」では届出だけで民泊を営業することができる
民泊新法では「家主在住型」と「家主不在型」では届出だけで民泊を営業することができます。
3 東京オリンピックと民泊に関する考察
民泊新法では180日ルールがあるため、ビジネスとして民泊を活用することはあまり実際的ではないといえます。では東京オリンピックに向けて民泊新法をどのように活用していけばよいのでしょうか?
① 「家主在住型」の優遇措置
「家主在住型」の民泊の場合、以下のような優遇措置を受けることができます。
ⅰ 住宅宿泊管理業者への委託が不必要
家主在住型では住宅宿泊管理業者への委託が必要ありません(その代わり自分で行わなければいけません)。ですから余計なコスト(委託管理費)が発生することがありません。
ⅱ 宿泊室が50m2以下の場合「住宅」扱いになる
住宅扱いの場合、防火に関する設備の設置が不要となるため、個人宅で民泊を運営しやすくなります。
② 「家主在住型」の民泊を営業して、異文化の交流を楽しむ
届出だけで民泊を営業できる「家主在住型」。東京オリンピックでの異文化交流を楽しんでしまいましょう。
今回は東京オリンピックと民泊について考察してきました。180日というルールが明文化せれてしまったため、なかなかビジネス面で活用しにくい民泊ですが、東京オリンピック開催時には盛況になると推測されます。余っている自宅の部屋などがある場合は民泊を営業してみてはいかがでしょうか。